このたび、日本語教育の文化発信部門にて文化庁長官から表彰されることとなりました。
「国民国家」ならびに「国語」の権威を疑い、抗うことで、私は自分自身の言葉を取り戻しました。そんな私が、国の機関である文化庁から表彰されるのは、白状すれば、複雑な気持ちです。
受賞の知らせを受け、真っ先に思い浮かんだのは、今、着実に増えつつある、日本に根をおろす外国人やその子どもたちの前に広がる道を歩きやすくするために、わたしは、わたしに備わりつつある"発言力"を、存分に生かさねば、ということでした。
というのもわたしは、そのことのために日々尽力なさっている人々を大勢知っています。
国の機関が、作家であるわたしに注目し、わたしの作品をとおして複数の文化をルーツに持つ子どもの可能性を見出してくださるのならば、わたしはこの機会に乗じて、"かつてのわたしのような子どもたち"や、その"保護者たち"がこの国でよりよく生活してゆくために日々努力なさっている方々の具体的な提言が、今後もっと、国や地方自治体にまっとうに聞き入られるよう切に望んでいると声を大にして主張します。
こんなわたしを、この賞に推薦してくださった文化庁国語課の皆々様に感謝を込めて。
日本人にうまれなかったために、わたしは国語という枠を越えた日本語という言語のふところの大きさを知りました。そしてそのおかげで、作家になることができました。これからもわたし、病める時も健やかなる時も常にわたしを支えてくれた日本語の豊かさを、より多くの方々に感じてもらえる創作を志します。
Life Goes On…👣
2019年3月12日
温又柔
追伸、表彰式では国家斉唱もあるそう。当日、両親には歌えなかったのに、祖父母はじょうずに歌ってくれたあの歌を、どんなふうに聞いていよう。いっそお腹の底からうたおうか。いずれにしろ、わたしに期待し、わたしを応援してくださる方々に軽蔑されない態度を貫きたい。わたしに備わりつつある"発言力"を殺さぬためにも。