🕊温聲提示🕊

温又柔が、こんなことします、や、こんなこと書きました、とお知らせするためのブログ。

🍎「日本語に住みついて」第5回が掲載されました

信濃毎日新聞で連載中「思索のノート」第5回めの掲載紙が届きました。きたしまたくやさんが描いてくださった水平線がひたと沁み入ります。

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令和3年の夏、インターネットには「東京五輪開会式の入場行進、チャイニーズタイペイ、が、台湾(たいわん)、とアナウンスされたことが、うれしい、うれしい、うれしい、中国、ザマァミロ!日台は仲良し!」という声が散見されました。昭和63年の"チャイニーズタイペイ"を胸に蘇らせながら私は、ノーマ・フィールドによる以下の文章を読み返していました。

「場所、人びと、もっと微妙で捉えがたいが、言語、こういうものにたいする愛着は、愛国心と混同されやすい。世界のあちこちで国旗を振りまわす連中が私たちに信じさせたがっていることとは相違して、それらは重なり合っているかもしれないが、おなじではない。そういう混同を、意図的であるにせよ、ないにせよ助長する制度がある。国際スポーツ大会などはきわめて効果的だ(…)あまたの感情がどっと混じりあうとき、旗は常に便利な、そしてあまりもしばしば致命的な、単純化をしてくれるものになる」(ノーマ・フィールド)。

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「文化の森へ」は、オーストラリアにある捕虜収容所から日本兵が集団脱走した「カウラ事件」をめぐるドキュメンタリー映画『カウラを忘れないで』について。事件のこと、まるで知らなかった。あの戦争について、私は知らないことが多すぎる。忘れないで。歴史は常に囁いている。同じ紙面に今回のコラム「即席の『愛国心』に用心」を載せてもらえたことの意味は小さくないと感じています。