土曜日は、横浜市鶴見図書館におじゃましてきました📚
”すべての区民が読書に親しむことができる環境づくり”の一環として年に一度催されているという「つるみ読書講演会」。その講師としてお招きを受けたためです(過去の講師には東京バレエ団の芸術監督の
斎藤友佳理さんや作家の角野栄子さんなど錚々たるメンバーが!)
『台湾生まれ日本語育ち』がきっかけで私の名前を知り、その後、私のツイートにも注目していたという琴寄さんが『魯肉飯のさえずり』の版元である中央公論新社さん宛に、とっても丁寧なご依頼メールを書いてくださいました。そのメールに心動かされ、私でよければ是非ともおじゃまさせてください、とすぐお返事をしたことを覚えています。「読書家」というには読んだ本の数が少なすぎる私ですが、物心がついた頃からもうずっと本屋さんや図書館など、本のある場所や、たくさんの本に囲まれている状態が大好きでした。
最初の小説が出版されてから6年もの月日を経てようやく2冊めの小説となる『真ん中の子どもたち』の刊行を控えた時期、ジョン・アップダイクが「私は図書館の棚に置かれるような本を書きたい。カバーははずされ、もう何年も前からあって、田舎の十代の子によって見つけられ、その子にむかって語りかける、そういう本を。書評にとりあげられるとか、平積みされるとか、そういうことは乗り越えなくちゃいけないハードルではありますが、でも、それもいま言ったような棚に置かれるためです」と話すのを読み、これこそが私の「理想」だと心を震わせたことがありました。
芥川賞候補になった私を「外国人枠」と雑なくくり方をした人たちへ(温 又柔) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)
今も私は、いつかの自分自身のような「あの子」に宛てるつもりで本を書きたいと思っています。そして、そうやって書き上げた本が「図書館の棚」にいつもちゃんと居場所がありますようにとも常に願っています。だからこそ、そんな私の本を、図書館でお仕事なさっている方がとても大切にして下さっていると知ってちょっと泣けるほどでした。また、鶴見図書館では、「外国につながる児童・生徒の読書支援」にもご尽力なさっているとのこと。いつかの私の母のように「異郷」で子育てに明け暮れる方々のために中国語や韓国語、スペイン語などの書籍も揃えているそうです。
そこで講演のタイトルは「ニホン語に住む私たち」とつけました。
ところが、そんな琴寄さんが約一年という長い時間をかけてご尽力くださったのにもかかわらず、コロナの感染拡大を踏まえ区民の方々の来館を受け入れるのは厳しい状況に……そこで、私だけでも現場に伺って、後日、配信の形で講演を収録してもらいました!無観客とは言え、当日は、館長をはじめ、お忙しいであろう区の職員の方々も足を運んで下さって、十名近くの方々が私の話を「ご清聴」くださる中、カメラの向こうで後日、私の話をお聞きくださるであろう区民の方々のことを空想しつつ話しました(時々ちょっと舌がもつれたりしたけど、そこはまあお許しください)。講演は鶴見区役所のHP内「つるみ読書講演会」で配信予定とのこと。続報をお待ちくださいませ。
横浜市立図書館は1921年に開業し、昨年で100周年を迎えたとのこと(鶴見図書館は1980年開業で、私と同い年)。町の人々にとって、あそこにいればホッとできる、という場所としての図書館はつくづく素敵です。鶴見図書館、鶴見区役所の方々のご歓迎に勇気づけられて、改めて、図書館が大切にしてくださるような本を書きたい、書き続けたいという思いを強くしています。
ニホン語に住みついて以来、本を読み、書くことで自分を支えてきました。『来福の家』でデビュー以来、一冊、また一冊と書くごとに、私の本を読んでくださる方々からも自分が深く支えられているのを意識します。同時にそのことに凭れ掛かることがないように、書くという行為にきちんと誠実でいようとも思わされます。ひきつづきがんばるよ🌷