🕊温聲提示🕊

温又柔が、こんなことします、や、こんなこと書きました、とお知らせするためのブログ。

書評📚自分の正義は他者にも「誠実」か

カロリン・エムケ著、浅井晶子訳『イエスの意味はイエス、それから…』(みすず書房)の書評を書きました。担当編集者さんがつけてくれた「自分の正義は他者にも『誠実』か」という問いを忘れずにいたいです。

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https://book.asahi.com/article/13989878

エムケといえば、『憎しみに抗って 不純なものへの賛歌』というタイトルをはじめて見たとき、それだけでもう心躍ったことが忘れられません。

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浅井晶子さんによる端正な日本語をとおしてエムケの言葉と出会うたび、大多数の人たちの「基準」にあてはまらない、その意味で、はじめから立場の弱い者たちをますます孤立させるような言葉が平然とまかりとおる社会で、憎しみの奔流に呑み込まれないためには、だれかと安易に凭れ合うための言葉ではなく、孤独をおそれず、どんなに時間がかかったとしても、私自身の言葉によって「より精確に思索する」重要さを思い知らされます。

 

 

書評📚痛みをさらして届けられた言葉

吉野靫著『誰かの理想を生きられはしない とり残された者のためのトランスジェンダー史』(青土社)の書評を書きました。

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マイノリティが"叫び続ける"のは、そうしなければ生き延びられないためだ。一方、特別な労力を払わなくても生きていられる私たちがいる。私たちが想像力を働かせれば、マイノリティの労力は軽減する。

まずは

#トランスジェンダー について知ることから始めよう。

書評の全文はこちらから。

https://book.asahi.com/article/13927955

ささやかな声をあげることぐらいしかできないけれど、そうする意味がある限り、定期的に続けたいと思ってます。私は、#ともにあるためのフェミニズム をもっと学びたいし、#トランスジェンダーとともに ありたい。

だから #トランス女性の差別に反対します。

普通/普通じゃない、日本/非日本、親日反日、本物/偽物……政治性を帯びた「根深い二元論」に惑わされながら、誰かの「理想」を生きることに反発しつつ自己を形成してきたという経験も手伝って、「本当の」男/女の間で刻々とただ生きる人たちが、不当な扱いを受ける状況にわたしはとても耐えられません。

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「あとから生まれてくる者たちのため」に『誰かの理想を生きられはしない とり残された者のためのトランスジェンダー史』を書いてくれた吉野靫さんに最大の敬意をこめて。

 

 

 

 

書評📚 顔料と色材が歩んできた歴史

『クロマトピア 色の世界 写真で巡る色彩と顔』の書評を書きました。

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めくったとたん、たちまち魅了された「色」の話。ショーン・タン『内なる町から来た話』も実にサイコーです。大好き。あと、森山至貴さん『あなたを閉じ込める「ずるい言葉」』の広告もあってなんだか頼もしい紙面でした。

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https://book.asahi.com/article/13886558

書評📚尊厳は保護や介助で失われない

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スナウラ・テイラー著、今津有梨訳『荷を引く獣たち 動物の解放と障害者の解放』(洛北出版)の書評を書きました。

https://book.asahi.com/article/13864115

個人的な話になりますが、この1年半にわたって木村友祐さんと交わした往復書簡『私とあなたのあいだ いま、この国で生きるということ』(明石書店)をとおして、ヒトというイキモノとしてまっとうであるには、といったことや、持てる者が持たざる者を軽んじる不均衡な構造の矛盾について対話を重ねてきたのもあり、本書の「動物の解放と障害者の解放」という副題に目が吸い寄せられました(白状すれば、木村さんのおかげで、そういう自分で今いられることに、ホッとしています)。

内容はもちろん、本そのもののつくりもうつくしく、挿画やデザインが大変魅力的な本。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784903127309

こういういい本が、きちんとつくられていることに希望を感じます。

森崎和江「非所有の所有--性と階級覚え書」についての論文で一橋大学修士号を取得し、その後、現在は韓国の延世大学文化人類学を専攻中という、訳者である今津有梨さんの経歴も素敵です。

そして、洛北出版さんの本、次々、読みたくなります🌱

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書評📚米南西部に脈打つチカーナの魂

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カリ・ファハルド=アンスタイン著、小竹由美子訳『サブリナとコリーナ』(新潮クレスト・ブックス)の書評を書きました。

https://book.asahi.com/article/13803294

やはり非常に心揺さぶられた小説、グカ・ハン著、原正人訳『砂漠が街に入り込んだ日』(リトルモア)

https://note.com/littlemore/m/md38a15e23228

とならんでるのが格別にうれしかったです!(しかも評者はいとうせいこうさん✨)

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わたしの書評をお読みくださった訳者の小竹由美子さんが新聞記事を写真に撮って送ったところ、なんとカリ・ファハルド=アンスタインさんご本人が直々に反応してくださったという幸せな反響が😭

https://twitter.com/WenYuju/status/1316036708329160706?s=20

実は私、『魯肉飯のさえずり』と『サブリナとコリーナ』が、ほぼ同じ時期に発売されることが、すごくすごくすごーく嬉しかったのです。”わたしたち”は世界中にいるんだね、と。

Familiar! I'm soooo happy 💞

2020/10/30  20:00〜22:00 オンライン配信イベントにも、ぜひご注目くださいませ🌱小竹由美子さん、小林エリカさん、わたしの敬愛するおふたりと、今回の書評では書ききれなかった私の『サブリナとコリーナ』への思いの丈を、たっぷりとしゃべるつもりです!

http://bookandbeer.com/event/20201030/

書評📚複数の軸で観察する未完の物語

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ジョン・M・キャロル著、倉田明子、倉田徹訳『香港の歴史 東洋と西洋の間に立つ人々』(明石書店)の書評を書きました。

https://book.asahi.com/article/13718761

「東洋と西洋の間に立つ人々」という副題に惹かれて手にした本書。はじめに、にあたる「歴史の中の香港」からぐいぐい引き込まれました。書評では紙幅が限られてるため言及はしませんでしたが、「香港の中国とイギリスの歴史的関係から、その遺産として」うまれた「ユーラシアン」(ヨーロッパ人男性と華人女性の間に生まれた子供たち)についての記述がとても興味深く、古くからある今日的な課題に直結するとくらくらしました。

また、「植民地の行政担当者に大いに影響されている」香港の歴史において、ほとんど唯一の「香港の華人からも協力と意見を得ようと真剣に努力した」第八代総督ジョン・ヘネシーには胸が熱くなりました。

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巻末に収録された歴代香港総督・行政長官一覧、名前の表記が英字綴りと漢字の"バイリンガル"表記であることも香港"ならでは"という感慨を催させて非常に興味深いです。

倉田明子さん、倉田徹さんによる訳者あとがきを読むだけでも、香港のややこしい豊かさが伝わります。訳者の判断でつけられた「東洋と西洋の間に立つ人々」という副題にこめられた意味が胸をうちます。

現在、明石書店さんのウェブサイトでこのあとがきは全文読めるのでぜひともご一読をおすすめします!

https://www.akashi.co.jp/smp/book/b516077.html

 

さて、今、わたしたち日本人は、香港の人々にどう寄り添えるのか?

 

 

🍚『魯肉飯のさえずり』(中央公論新社)、8/21発売日を控えて🍚

『魯肉飯のさえずり』、できました。ロバプンノサエズリ、と読みます。

https://www.chuko.co.jp/tanko/2020/08/005327.html

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カタコトの日本語に台湾のことばをたっぷり織りまぜたママ語を話すオカアサンの気持ちをめいいっぱい想像したくて、書くことを決意した小説。やっとのことで、書けました。実の母親にはあまり読ませたくない、でも、このくにで暮らすたくさんのママやオカアサンたちに心から捧げたい、私の初めての長篇小説。

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装幀家の鈴木久美さんがこの小説にぴったりと仰ってくださった少女の絵は、日本画家・山本真澄さんによる「風の香」という一枚です。聞き耳頭巾にも見えるうつくしい鳥のもようが施された布をかぶる少女のまなざしに私も一目惚れしました。扉ページでタイトルを囲む鳥と花たちがとても愛おしい…

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主人公・桃嘉が心の声をとり戻すまでの道のりをいっしょに生きた担当者さんが「ことばを超えて届くのは、愛しいさえずり」と、この小説を表現してくださいました。

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幸せに"ふつう"はない。

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発売日まで、あと少しでどきどきしています…親愛なるあなたのもとにも、このものがたりが届くように祈ってます🕊

https://twitter.com/chuko_bungei/status/1291663719299035138?s=21