🕊温聲提示🕊

温又柔が、こんなことします、や、こんなこと書きました、とお知らせするためのブログ。

「誕生日寄付」、感謝を込めて。そして、ケイン樹里安さんのこと。

ご報告が大変遅くなってごめんなさい。5月16日、「バースデー・ドネーション」が終了しました。42歳の誕生日にちなんで目標額を42000円に設定しましたがとてもありがたいことに5月14日中には目標に達し、「ストレッチゴール」として第2の目標額を55555円としました。最終的にはそれも大幅に上回る63206円が集まりました。私へのお誕生祝いという形での「寄付」にご協力くださった計26名の方々のおかげです。お寄せくださったメッセージ、一つひとつに心が温められて、幸せな「お誕生日期間」となりました。Synacableのウェブ上で引き続きお一人おひとりにお返事を書くつもりですので、何卒、もう少々お待ちくださいませ。

wenyuju.hatenablog.com

「日本語の住人がみんな幸せでいられますように」。私の願いに共鳴し、「寄付」という形でお力を貸してくださった26名の方々のおかげで、自分は微力ではあっても決して無力ではないのだな、と改めて確信しています。「NPO法人 青少年自立援助センター YSCグローバル・スクール」の代表、田中宝紀さんはおっしゃいます。
「海外にルーツを持つ子どもたちは、『お前は普通じゃない』という声に出会うと、『普通ってなんだろう?』と考える前に、普通じゃない自分をなんとかしようと親を恨む方向に行きやすい。それを『そうじゃないよ』と言って支えてくれる学校の先生とか、日本語ボランティアに出会えることは大きい」。

だからこそ、学校の先生、あるいはボランティアさんとしてではなくても、私たちの一人ひとりが、自分は自分のままでいいんだ、とそんな子どもたちに対して感じさせてあげられるといいなあとつくづく思います。

2020年2月15日、曽根崎新地にて。

「普通ってなんだろう?」 ずっとそう問い続けて、境界線上の子どもたちがあるがままの自分を受容する道筋の模索や、社会の不均衡に気づかずにいられるマジョリティこそが、自分たちにとっての「普通」の形を積極的に問い直すことで、人と人とが風どおしの良い関係を築けるようにと、社会学の知識を総動員して言葉を尽くしてきたケイン樹里安さん。

「バースデー・ドネーション」の最終日午後、かれと親しかった栢木清吾さんがその訃報を知らせてくださいました。
ケインさんとは私、数えてみたら実際にお目にかかったのはたった2度のみ。それでも、大阪で栢木さんが引き合わせて念願の初対面を果たした時はお互いに「初めて会う気がしない」と大いに笑い合いました。昨年12月にお会いした別れ際も「超楽しかった。これからはもっと頻繁に会おうね」と言って別れたのに。正直言って、今はまだ寂しくてたまりません。ツイッターのプロフィール画面に「明記」するほどコカ・コーラと唐揚げが大好きだったケインさん。かれが「燃料」と呼んだコーラと唐揚げでお腹を満たして、今日も、仕事、頑張ります。明日も、明後日も、これからも。これからもずっと、ケインさんならどんなふうに読んでくれるかな? と想像しながら、「普通」ってなんだろう? と問う小説やエッセイを書き続けます。ケインさんがずっとそのことに尽力してきたように、自らは「普通」なのだと一切疑わずにこられた人たちに宛てて自分の言葉を磨きます。境界線上の子どもだった一人として。日本語の住人として。このドネーションの核心にある私の祈りも、ケインさんがやられてこられたお仕事の本質とまったく無縁ではないと信じて、この場を借りて。