🕊温聲提示🕊

温又柔が、こんなことします、や、こんなこと書きました、とお知らせするためのブログ。

📚「ニホンゴデキン」大多数だった

洪郁如著『誰の日本時代 ジェンダー・階層・帝国の台湾史』(法政大学出版局)の書評を書きました。

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https://book.asahi.com/article/14407255

著者の言葉を、一人でも多くの「日本人」と分かち合いたい。

「〈もう一つの日本時代〉を提起することは、告発でも、糾弾でもない。」

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前著『近代台湾女性史』(勁草書房)もすばらしい一冊でしたが、本著もまた、〈日本時代〉が台湾に残した影響の深さを知るためにも台湾の戦後史にむきあう際の、さらに重要な態度の保ち方を示してくれます。

台湾でうまれながら日本で育つ過程で限りなく日本人に近い台湾人として成長した私は、台湾は「親日国」であると無邪気に信じる立場からはどうしても距離がありました。日台友好は望むものの、宗主国と植民地だった両者の間に横たわる歴史に対してはもっと繊細に向かい合いたいと常々願ってきました。

誰的日本時代?

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戦後生まれの洪郁如さんが日本語で書いた本書のタイトルに添えられた中国語を見逃してはいけないと、いま、あらためて、自分に言い聞かせています。

あるのは、「語られてきた〈日本時代〉」と「語られてこなかった〈日本時代〉」だけ。「ほんとうの〈日本時代〉」とか、「真実の台湾」など、ないと私は思ってます。仮にあるのだとしたら、日本人にむかって真実やほんものの台湾について語りたがる一部の台湾人の欲望と、彼らにそのような欲望を生じさせた台湾の歴史でしかない。

台湾に〈日本時代〉を強いた側こそが、そのことに、もっと慎重になるべきなのだ。なかなか伝わらないので、何度でも繰り返します。

戦前世代の日本語使用者がいくら「あの時代は素晴らしかった」と讃えてくれようとも、その日本語をうけとめる日本人が自らに都合よく「日本時代」を解釈してはならない。蒋介石の悪口を言えば台湾愛が示せるほど台湾は単純じゃない。

それがわかったら、もう二度と、私が「台湾人」だからって「ぼくは台湾が大好きで〜」と気軽に、それも日本語で、私に話しかけないでね。そんなあなたとは、永遠に、さよなら、再見。