🕊温聲提示🕊

温又柔が、こんなことします、や、こんなこと書きました、とお知らせするためのブログ。

🍏「日本語に住みついて」が最終回を迎えました。

2021年4月から始まった信濃毎日新聞文化面「思索のノート」の連載が、先週の日曜日(3月13日)に最終回を迎えました。

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春は、またやってくる。はじまり、と題された、画家から作家への12回めの「応答」。

『台湾生まれ日本語育ち』の版元である白水社経由で、信濃毎日新聞社のIさんからご連絡があったのは、昨年3月上旬。

「……日本に住むマジョリティーの人たちの間にはいまだに〈日本に住む人=日本国籍=日本語を話す〉という固定観念が根強くあります。ぜひとも、〈境界を越える〉というテーマで、読者の思索の種となるような話題を、温さんがこれまで書いてこられた延長でご執筆いただければ……」。

心躍るご依頼に、日本語に住みついて、というタイトルがすぐに浮かんできました。こうして始まったエッセイの連載。Iさんの心のこもった「併走」のおかげで、私の「立場」(日本で育ち、日本語を日本人のように話すものの、日本国籍は持たない)を例として示すことで、〈日本に住む人=日本国籍=日本語を話す〉の図式を楽しく揺さぶる、という目標を果たすべく、1年にわたって「日本語に住みついた」私について思索する時間を満喫してきました。書けば書くほど、忘れていたと思っていたことが書かれるべきこととして次々と蘇り、書かなくてはならないと思うことが増えてゆく……いつしか、同じ主題を延々と反復せずにいられない書き手である自分を、以前よりも少々誇りに思えるようになりました。それどころか、反復の必要がある限り、そうし続ける責任が自分にはあるのかもしれない、とも。

こうして春がまたやってきて、Iさんとの「最後」のやり取りを無事終えて掲載紙が届いて、ホッとすると同時に、あっというまだったな、と卒業式の後のような気持ちになっています。 連載中に、画家のきたしまたくやさんと一緒に、Iさんをたずねて長野に行きたかったのに、コロナの状況で実現できなかったことだけが心残り…!

Iさん、信濃毎日新聞社さんに、あらためて胸いっぱいの感謝を込めて🍏