🕊温聲提示🕊

温又柔が、こんなことします、や、こんなこと書きました、とお知らせするためのブログ。

✏️推薦文を寄せました。上川多実著『〈寝た子〉なんているの? 見えづらい部落差別と私の日常』(里山社、2024)

ひとりでも多くの、それを絶対に必要とする人のために、一冊いっさつの本を心を尽くして編みあげる、小さな出版社のお一つ、里山社さん。そんな里山社さんから、もうじき、こんな本が。

『〈寝た子〉なんているの? 見えづらい部落差別と私の日常』。著者は、上川多実さん(多く、実る、って、なんとふくよかなイメージの、素敵なお名前なのでしょう)。里山社さんのKさんから大変丁寧なメールをちょうだいし、上川さんの「日常」が織り込まれたこのエッセイを読ませてもらって、推薦文を書かせていただきました。

satoyamasha.com

佐藤真を師事しドキュメンタリー映画『ふつうの家』を発表したこともある上川さんは、「マジョリティ側にわかるように自分のつらさを説明し続けなければならない」ことこそ、ご自身のつらさの大きな一因だったと書いています。本人が望もうと望むまいと、他の多くの人びとから「少数派」とみなされる機会の方が圧倒的に多い立場で生きざるを得ない人。そういう人たちのほとんど誰もが、自分に「正直」であろうと決意した途端、どうしても、しょっちゅう、絶対にぶつからざるを得ない、「わかってほしい、わかってもらわなければ、でも、わかってもらうために、なぜ、こんなにも一方的に頑張らなくちゃならないの?」という「疑問」……この本が、イ・ジェフンやチ・ジニの出演するドラマ『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士』の話題から始まるのもあって、あのドラマがまさにそうであったように、私たち次第で、この「世界」は、今よりももっとましになる、と読後にしみじみと感じました。それにしても、幸せなふりをしない、不幸なふりをしない、正直に自分と向き合う。自分自身を「解放」するには、やっぱりそれしかなさそうです。「部落差別」について学ばなきゃ、などと身構えず、上川さんによるこの「解放日誌」を、やっぱりいつもなんとなく窮屈なあなたにこそ是非とも読んで欲しく思います。